by 謎彦 by なぞひこ
by Nazohiko


トゥーランドット(1)

「三大テノール」ブームとトリノ五輪をきっかけに、いよいよ人口に膾炙しつつあるオペラ・アリアがあります。プッチーニ最後の作品となった、歌劇『トゥーランドット』(1926初演)の第3幕で歌われる「誰も寝てはならぬ」です。

シルクロードのどこかから、いつとも知れぬ時代の北京にやってきた、流浪の王子カラフ。彼は「トゥーランドット姫の出す、3つの謎々を解けた者は、姫を娶ることができる」という布告を聞いて、素性を隠したまま一世一代の賭けに出ます。

老皇帝やトゥーランドット姫や廷臣たちの居並ぶ前で、彼は謎々を次々に解いてゆきますが、それでも姫が結婚をイマイチ渋るので、今度は自分の方から「明日の朝までに私の正体を明かせたら、私は首を差し出すが、刻限までに正体を見破れなければ、いよいよ妻になってもらう」と吹っかけるのでした。

ここまでが第1幕と第2幕の内容です。第3幕は、北京じゅうの吏員たちが「誰も寝てはならぬ!」と告げながら、カラフの素性について聞き込みに歩いている場面から始まります。夜明け近い宮殿の庭にたたずんで、街から聞こえてくる声に悠然と耳を傾けるカラフ。彼はやがて歌い出します。

「誰も寝てはならぬ」か……。姫よあなたも、今晩は眠らずに星々を眺めているのだろうよ。冷え冷えとした宮中で、発情と希望に打ち震えながら。だがね、こちらは秘密を握っているのだ。私の名前を知る者など、この異郷には誰もいない。私の唇がみずから開く時、あなたは私のものになる。夜よ失せてしまえ、星よ沈んでしまえ。夜が明ければ、私が勝利するのだ!

かつて白血病に倒れた「三大テノール」の末っ子カレーラスは、この歌を口ずさみながら放射線治療に耐え、ついに現役復帰を果たしたという話が、オペラ好きには知られていますが、このエピソードを知るにつけ、私は「誰も寝てはならぬ」という歌の或る箇所が、いよいよ腑に落ちなくなってきたのでした。

(つづく)

# by nazohiko | 2006-05-04 00:48
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by nazohiko | 2006-05-04 00:48 | ☆旧ブログより論考・批評等
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