by 謎彦 by なぞひこ
by Nazohiko


機内食の後の読書

しかしこの話でせっかく興が乗ってきたのに、ウィテリウスがそれをぶちこわした。彼はほろ酔いきげんで宴会に来ていたのだが、突然、なんの理由もなしに、だしぬけに無意味な笑い声をたてたのである。

「あの脂肪のたるは何を笑っているのかね」ネロがたずねた。

「笑いは人間を動物から区別いたします」ペトロニウスが言った。「あの男は自分がブタでないことを示す証拠がほかにないので、笑っているのでございます」

ウィテリウスは笑うのを途中でやめて、ソースと脂で光っている唇をぴちゃぴちゃ鳴らしながら、列席の者たちを、まるでいままで一度も見たことがないと言わんばかりの、びっくりしたような顔つきで見まわした。

※シェンキェーヴィチ『クオ・ワディス』(木村彰一訳)

# by nazohiko | 2006-10-02 01:38
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by nazohiko | 2006-10-02 01:38 | ☆旧ブログより随想・雑記等
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