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今、気になる歌人――林和清氏

故知らず寝具濡れゐし朝明(あさけ)より鯉魚を抱きて生きゐると思ふ 林和清

 林氏は一九六二年生で塚本邦雄に師事。既刊歌集に『ゆるがるれ』と『木に縁りて魚を求めよ』があり、掲出歌は後者から引いた。同書の跋文には、一冊を通して読者に水を感じてほしいと記されているのだが、この茫漠たる発言を仮に腑分けするなら、自己や他者の屹立ぶり/不安定ぶり、また充実ぶり/沮喪ぶり等を水気として表象することに、氏はとりわけ取り組んだようだ。他にも例えば「黒雲の思ひを持ちて汝を訪へばチワワをり皮膚うすきチワワ」という歌があり、ここでは「黒雲」が自己に備わる水気の一様態であるのに対し、チワワの側も「皮膚うすき」というからには、薄膜一枚によって辛うじて流出を免れる血肉の塊として、彼そして我々の心眼に映るだろう。このように自他の間における水気の対照論や関係論として応用される場合もあるし、鍋に沸騰する湯のように自己の外部にある水気を描くことによって、投影的或いは対比的に自己が語られる場合もある……歌人論というには局部的な話題に止まってしまったが、末筆ながら藤原良経の道統を継ぐとでも評したい本質的に清涼で高雅な歌風も、氏のかけがえなき特質である。


初出:メールマガジン「短歌通信ちゃばしら」2003年8月号

# by nazohiko | 2003-08-01 00:00
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by nazohiko | 2003-08-01 00:00 | ☆旧ブログより論考・批評等