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カテゴリ:◆漫画を読む( 2 )

4月1日

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by nazohiko | 2017-04-01 21:12 | ◆漫画を読む

もかまたり

 集英社刊の『ぶ~け』誌で、1990年代の初頭に連載されていた、吉野朔実の「いたいけな瞳」は、吉野作品にしばしば登場する心理学的なテーマが、ちょうど良い程度に、前面に押し出された佳品である。それぞれに登場人物の違う、数十の短篇漫画から成っているが、私が幾度も読み返してきたのは、小学館文庫版では第3巻に収録された第15話「恐怖のおともだち」である。

 日常の中で、次々と「怖いもの」を見つけてしまう小学生「あかり君」と、「怖いもの知らず」の家政婦「白玉」が、この話の主人公だ。そんな二人が、外出の帰り道で「珈琲屋 もかまたり」という看板に出くわしてしまう。青ざめる「あかり君」の手を掴んで、「白玉」は店に入ってゆき、看板メニューの「もかまたり」を注文する。

  「そう、『もかまたり』は、コーヒーの種類のひとつ。
  "恐怖"の正体は、理解不可能な対象に遭遇した時、
  人間の本能が知らせる警戒警報です。
  対象を理解し、対処方法を考える。
  この場合はコーヒーだから、飲めばいいんです」

  「……苦いよ」

  「そういう時は、砂糖とミルクをたーっぷり入れる……そうそう……どう?」

  「おいしい」

  「対処できれば恐怖は消えます」

  「……まだちょっと怖いよ」

 会話の妙もさることながら、「珈琲屋 もかまたり」と書かれた看板の筆致が、如何にも「人間の本能が知らせる警戒警報」を呼び起こしそうで、見事なのである。砂糖とミルクをたっぷり入れた「もかまたり」を口にした「あかり君」が、「おいしい」と答える時の表情(左目と眉毛しか描かれない)も、正鵠を射ている。

  「ううん、違うの。
  怖いものがいっぱいあって、すごくいっぱいあって、
  ぼく、きっと、怖すぎて死ぬんだよ。」

  「ふーん。
  君はもしかしたら、ホラー小説とか、恐怖映画とか、
  作る人になるかもしれないね。」

  「それ、何する人?」

  「うーん……。
  つまり、人を怖がらせて、楽しませるってことね。」

  「怖がりたい人なんか、いないよ。」

  「いる。
  他人の恐怖を疑似体験することで、
  生きていることを実感するわけだね。
  人より怖がりなあかり君は、人より充実して生きていると言える。
  想像力がたくましいということだ。
  世の中には、恐怖を分けてほしいと思ってる人が、たくさんいる。
  怖がり方を知らない人が、たくさんいる。」

  「怖くない方が、ずっといいのに。」

  「怖がりでない人達は、平気で怖いことをするので、
  早死する確率が高い。
  あかり君は、ものすごく長生きする確率が高い。」

  「怖がりながら長生きするのって、地獄じゃないかしら。」

  「心配しなくても、年を取るにつれて、
  怖いものは、へってゆきます。」

  「ほんと?」

  「私は、そうです。」

  「……。」

  「怖がりでなくて、
  どうして恐怖の正体について、考えたりするでしょう。
  私は、ものすごく怖がりなんです。」

  「え?」

 このあたりの対話(途中を適宜省略して引用した)も、今なお新鮮に感じる。それというのも、私自身が「恐怖のおともだち」に他ならないので……。
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by nazohiko | 2012-08-13 01:15 | ◆漫画を読む