by 謎彦 by なぞひこ
by Nazohiko


君よ知るや汝窯の青磁水仙盆

大阪市立の東洋陶磁美術館で、
特別展「台北 國立故宮博物院―北宋汝窯青磁水仙盆」を観てきた。
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台北の国立故宮博物院に収蔵される、中国歴代の名陶は数多あれども、
中国北宋時代の終わり(11世紀末~12世紀初)に、
河南地方の汝窯(じょよう)で作られた「青磁無紋水仙盆」は、
最高峰との呼び声をほしいままにする優品である(下の写真を参照)。
「水仙を生けるための盆」と呼ばれているが、実際の用途はよく分かっていない。
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汝窯の青磁は現存数が極めて少ない上に、
貫入(釉薬の細かい亀裂により生じる紋様で、開片とも呼ぶ)の全くない現存作品は、
これを措いて、他には世界のどこにもない。
そんな「青磁無紋水仙盆」が、初の海外出展として大阪へやってきたのである。
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私はこの器を、台北故宮で幾度も観たことがあるのだが、
それでも、今回の特別展に出かける価値が十分にあったのは、
台北故宮の擁する汝窯の青磁水仙盆を他に3点、
同じく台北故宮に収められた、清朝雍正~乾隆時代(18世紀)の複製品1点、
そして、東洋陶磁美術館が自ら収蔵する汝窯青磁水仙盆1点、
合計6点を一挙に展示するという、びっくりするような企画であるからだ。
(上の写真を参照……中央上が「無紋水仙盆」、左下が東洋陶磁美術館の所蔵品)

というよりも、台北故宮で見慣れた「青磁無紋水仙盆」と同じ形式の汝窯磁器が、
こんなにも現存していることに、まず驚かずには済まされなかったし、
まして台北故宮が、汝窯の青磁水仙盆を複数持っていたとは夢にも思わなかった。
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更に、今回の特別展では、
中国史上最大の美術品コレクターであった、清朝の乾隆帝(18世紀)が、
「青磁無紋水仙盆」や、その他の青磁水仙盆のために作らせた、
紫檀製の台座も展示されているのがすばらしい。
台座の内部には、乾隆帝の親筆になる豆本が収められている(上の写真を参照)。

私の知る限り、台北故宮では青磁水仙盆の「本体」のみを展示しており、
清朝宮廷で作られた台座については、その存在さえ紹介されていなかったと思う。
後世の附加物は切り離しておくべきだというのも、一つの見識なのだろうが、
北宋の青磁が、清の時代にはこのような「愛され方」をしたという事実、
言い換えれば「賞翫の歴史」という、もう1つの美術史を物語ってくれる品として、
青磁水仙盆とは異なるケースに並べられた、合計3つの台座は値千金であった。
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門外不出の「青磁無紋水仙盆」を初めとして、
台北故宮に蔵する汝窯青磁水仙盆のありったけ(?)を日本に運んでくるという、
この企画が実現するまでには、
風聞する所によれば、並大抵ではないほど長い道のりがあったらしい。
収蔵品の水準では、国際的に評価の高い美術館であるとはいえ、
国立の機関でもなく、大企業の傘下にあるわけでもない東洋陶磁美術館で、
今回の特別展を開催に導かれた、館長の出川哲朗氏(!)に拍手を送ろう。

特別展は3月26日まで続く……ということは、
しばらくの間、台北の国立故宮博物館で「青磁無紋水仙盆」や、
その他の汝窯青磁水仙盆を観ることは、当然ながら不可能である。
もしあなたが「青磁無紋水仙盆」をお目当てに、
3月中の台湾旅行を予定しておられるのならば、
エバー航空のHello Kitty Jetも、円山大飯店のスイートルームもキャンセルして、
大阪の中之島へ奔り、東洋陶磁美術館へ駆け込まれるがよい。
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by nazohiko | 2017-03-09 23:15 | ◆展覧を観る
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