by 謎彦 by なぞひこ
by Nazohiko


君よ知るや「勸世宗親會」(9)

台湾語(福建南部と台湾の言葉)は、
これまで長い間、口頭でのみ使われる言語であった。

文字で書かれる、ほぼ唯一の「中国系の言語」として、
過去には漢文があり、やがて中国語(北京の言葉)に取って代わられた。

こうした歴史的背景があるため、
台湾語には今なお、個々の語彙をどのように漢字で書けばよいのか、
人々に十分浸透したルールというものが存在しない。

中華民国政府(中国大陸から逃げ出した)の受け皿にされた台湾では、
かつて中国語(北京の言葉)の使用が強要され、
台湾語を話すことは、政府に睨まれるリスクを伴っていたのだが、
現在では、台湾語が「郷土言語」のひとつとして認められ、
政府機関や学術機関の側で、書き方の規範を作ろうという動きもある。
但し、実際の言語生活に対して影響力を発揮するには程遠い。

前述のように、台湾語で「美しい」を意味する語として「スイ」があるわけだが、
漢字の意味を重視して「美」と書く人もいれば、
発音(中国語で漢字を読む場合の)を重視して「水」と書く人もいる。

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中には、この辞典に見られるように、
台湾語で「スイ」と読めるような、なおかつ「美しい」という意味を想像できるような、
新しい書き方(媠)を提唱する人たちもいる。

「媠」は、台湾語のために発明された字ではない。
もともと漢文で使われていたもので、日本語では「みめよい」と訓読みする。
即ち、「美しい」という意味である。

古代中国の発音に由来する、日本語の音読みは「ダ(呉音)」や「タ(漢音)」であり、
中国語(北京の言葉)では「ドゥオ」と発音するそうだから、
これを「スイ」と読ませるのは、歴史的文脈からすれば無理がある。

とはいえ、台湾語を除く「中国系の言語」の中では、
中国語(北京の言葉)を含めて、この字はめったに使われないようだから、
「スイ」という発音で押し通しても、混乱を生じることはないはずだ。
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by nazohiko | 2016-07-11 01:06 | ◇見聞を誌す
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