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再び「けふは大晦日なり」

691 西行法師
  歳暮に、人につかはしける
おのづからいはぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる

692 上西門院兵衛
  歳の暮れによみ侍りける
かへりては身にそふ物と知りながら暮れゆく年を何慕ふらむ

693 皇太后宮大夫俊成女
隔てゆく世々の面影かきくらし雪とふりぬる年の暮れかな

694 大納言隆季
新しき年やわが身をとめ来らむ隙ゆく駒に道をまかせて

695 俊恵法師
  俊成卿家十首歌よみ侍りけるに、歳の暮れの心を
歎きつつ今年も暮れぬ露の命生けるばかりを思ひ出にして

696 小侍従
  百首歌たてまつりし時
思ひやれ八十の年の暮れなればいかばかりかはものはかなしき

697 西行法師
  題しらず
昔思ふ庭にうき木を積みおきて見し世にも似ぬ年の暮れかな

698 摂政太政大臣
石上布留野の小笹霜を経てひとよばかりに残る年かな

699 前大僧正慈円
年の明けて憂き世の夢の覚むべくは暮るともけふは厭はざらまし

700 権律師隆聖
朝ごとの閼伽井の水に年暮れてわが世のほどの汲まれぬるかな

701 入道左大臣
  百首歌たてまつりし時
急がれぬ年の暮れこそあはれなれ昔はよそに聞きし春かは

702 和泉式部
  年の暮れに身の老いぬることを歎きてよみ侍りける
数ふれば年の残りもなかりけり老いぬるばかりかなしきはなし

703 後徳大寺左大臣
  入道前関白百首歌よませ侍りける時、歳の暮れの心をよみてつかはしける
石走る初瀬の川の波枕はやくも年の暮れにけるかな

704 有家朝臣
  土御門内大臣家にて、海辺歳暮といへる心をよめる
ゆく年を雄島の海人の濡れ衣重ねて袖に波やかくらむ

705 寂蓮法師
老いの波越えける身こそあはれなれ今年も今は末の松山

706 皇太后宮大夫俊成
  千五百番歌合に
けふごとにけふやかぎりと惜しめどもまたも今年に逢ひにけるかな

 『新古今和歌集』冬部の末尾に、歳末を詠んだ歌が16首並んでいる。行き行きて帰らぬ時をしみじみと嘆くものが多い中に、人を思いやる西行の歌、陽性の機知を前面に押し出した藤原良経(摂政太政大臣)の歌【注1】、そして長寿者(千五百番歌合の頃は90歳に近い!)の「徳」のようなものが滲み出る藤原俊成(皇太后宮大夫俊成)の歌【注2】が、それぞれ独特の存在感を放つ。特に俊成の歌は、歳末歌群のラストコールとして、なおかつ四季の部(春上下・夏・秋上下・冬)の締め括りとして絶妙の選択だと言えよう。

 今晩は、旧暦の除夜に当たる。

【注1】
「霜を経て」は「星霜を経て=長い時間を経て」の意味をも暗示するか(久保田淳氏の解)。「ひとよ」は「一節」と「一夜」の掛詞となっている。

【注2】
先の「けふ」は広く「毎年の大晦日」を指し、後の「けふ」は狭く「この年の大晦日」を指す。

(関連記事:http://japondama.exblog.jp/19123207/
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by nazohiko | 2013-02-09 21:45 | ◆詩歌を読む
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