by 謎彦 by なぞひこ
by Nazohiko


会いたかった~!(8)

みやこにも ありけるものを さらしなや はるかにききし おばすてのやま
古今著聞集 宮内卿は甥にてありける人に名たちし也。をとこかれがれになりにけるとき、よみ侍りける/都にも有けるものをさらしなやはるかにきゝしをばすての山(巻第八・好色第十一)

 田渕句美子氏は『新古今集:後鳥羽院と定家の時代』(角川選書、2010)の中で、「宮内卿がこんな凡々たる歌を詠んだだろうか」と述べて、このエピソードの史実性に疑いを呈する。その上で、このような語りが生まれた背景に洞察を巡らせ、「彼女自身が早世したこと」「彼女の出身が権門でも歌道の家でもなかったこと」「彼女を取り立てた後鳥羽上皇も既に没していたこと」「『新勅撰和歌集』以後の勅撰和歌集に、彼女の歌が僅かしか採られなくなったこと」の4点を指摘している。『古今著聞集』の成立した1254年(宮内卿の没後約50年)までには、彼女に関する醜聞を書き立てても、筆者が不利益を被る心配がなくなっていたということだろう。
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by nazohiko | 2013-02-02 00:38 | ◆詩歌を読む
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