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会いたかった~!(6)

 宮内卿の最初の作品群(現存する限りにおいて)である「正治二年第二度百首和歌」(1200年)から、『新古今和歌集』には僅か1首「たつた山あらしや嶺によわるらんわたらぬ水も錦たえけり」しか採られなかった。

  外山なる楢の葉までははげしくて尾花が末によわる秋風
    (『続古今和歌集』〈1265年〉秋上)

  寂しさを訪ひこぬ人の心まであらはれそむる雪のあけぼの
    (『新続古今和歌集』〈1439年〉冬)

  思ふより心の闇も晴れぬべし鷲の高嶺にありあけの月
    (『新続古今和歌集』〈1439年〉釈教)

 彼女の没後に編まれた勅撰和歌集にも、以上の計3首が入集したに止まるが、3首目に掲げた釈教歌を含めて、この「正治二年第二度百首和歌」には「若書き」の域を出ない作品が多いように思われるから、歴代勅撰集の撰者たちの眼力は正しかったと評するべきだろう。

 一方で、やがて「わたらぬ水も」の7音が「制の詞」に列せられるようになった(即ち彼女の「特許」が世人に認められた)「たつた山……」の歌だけでなく、冷酷なまでの静けさと白さを宿した「寂しさを……」の歌や、『新古今和歌集』雑下に採られた「竹の葉に風ふきよわる夕ぐれの物のあはれは秋としもなし」(初出は老若五十首歌合)を予告するような、fp(フォルテピアノ=強いアタックの後、直ちに弱音に転じる)の力感が目覚ましい「外山なる……」の歌には、既に紛れもない「宮内卿」の刻印を見て取ることができる。

 説明的な筆致に終始する「外山なる……」の歌に比べて、より文学的な広がりを獲得した「竹の葉に……」の歌の方に、やはり一日の長があると言えるだろうから、『新古今和歌集』が後者を採って前者を採らなかったことに理不尽はないと思うが、fpの快楽(けらく)一本で勝負した「外山なる……」の歌にも、私は捨て難い魅力を感じる。

 そんな「外山なる……」の歌が『続古今和歌集』によって再発見されるまでには、65年を要したことになるが、「寂しさを……」の歌は、その誕生から実に139年もの時を経て、史上最後の勅撰和歌集である『新続古今和歌集』に居場所を与えられたのだった。
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by nazohiko | 2013-01-30 00:07 | ◆詩歌を読む
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