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会いたかった~!(5)

 『新古今和歌集』に入集した宮内卿の歌は、30首を数える。部立に従って並べた上で、各歌の初出を示せば、次の通りになる。

 【春上】
   かきくらし猶ふる里の雪のうちに跡こそみえね春は来にけり
    (老若五十首歌合・建仁元年〈1201〉2月)

   うすくこき野辺のみどりの若草に跡までみゆる雪のむら消え
    (千五百番歌合・建仁2年〈1202〉9月)

 【春下】
   花さそふひらの山かぜ吹きにけりこぎゆく舟のあと見ゆるまで
    (仙洞五十首・建仁元年〈1201〉12月)

   あふ坂や梢の花を吹くからに嵐ぞかすむ関の杉むら
    (仙洞五十首・建仁元年〈1201〉12月)

   柴の戸をさすや日かげのなごりなく春くれかかる山の端の雲
    (土御門内大臣家影供歌合・建仁元年〈1201〉3月)

 【夏】
   片枝さすおふのうらなし初秋になりもならずも風ぞ身にしむ
    (千五百番歌合・建仁2年〈1202〉9月)

 【秋上】
   思ふことさしてそれとはなきものを秋の夕べを心にぞとふ
    (新古今和歌集を現存最古の出典とする・元久2年〈1205〉3月)

   心あるをじまのあまの袂かな月やどれとはぬれぬ物から
    (撰歌合・建仁元年〈1201〉8月)

   月をなほ待つらんものかむら雨の晴れ行く雲の末の里人
    (仙洞五十首・建仁元年〈1201〉12月)

 【秋下】
   まどろまでながめよとてのすさびかな麻のさ衣月にうつ声
    (撰歌合・建仁元年〈1201〉8月)

   霜をまつ籬の菊の宵のまにおきまよふ色は山のはの月
    (仙洞五十首・建仁元年〈1201〉12月)

   たつた山あらしや嶺によわるらんわたらぬ水も錦たえけり
    (正治二年第二度百首和歌・正治2年〈1200〉11月以後)

 【冬】
   からにしき秋のかたみや立田山ちりあへぬ枝に嵐ふくなり
    (老若五十首歌合・建仁元年〈1201〉2月)

 【恋三】
   きくやいかにうはの空なる風だにも松に音するならひありとは
    (水無瀬殿恋十五首歌合・建仁2年〈1202〉9月)

 【雑下】
   竹の葉に風ふきよわる夕ぐれの物のあはれは秋としもなし
    (老若五十首歌合・建仁元年〈1201〉2月)

*      *      *      *      *

 これら30首を初出の順に並べてみると、今後は次の通りになる。

 【正治二年第二度百首和歌・正治2年〈1200〉11月以後】
   たつた山あらしや嶺によわるらんわたらぬ水も錦たえけり
    (『新古今和歌集』秋下)

 【老若五十首歌合・建仁元年〈1201〉2月】
   かきくらし猶ふる里の雪のうちに跡こそみえね春は来にけり
    (『新古今和歌集』春上)

   からにしき秋のかたみや立田山ちりあへぬ枝に嵐ふくなり
    (『新古今和歌集』冬)

   竹の葉に風ふきよわる夕ぐれの物のあはれは秋としもなし
    (『新古今和歌集』雑下)

 【土御門内大臣家影供歌合・建仁元年〈1201〉3月】
   柴の戸をさすや日かげのなごりなく春くれかかる山の端の雲
    (『新古今和歌集』春下)

 【撰歌合・建仁元年〈1201〉8月】
   心あるをじまのあまの袂かな月やどれとはぬれぬ物から
    (『新古今和歌集』秋上)

   まどろまでながめよとてのすさびかな麻のさ衣月にうつ声
    (『新古今和歌集』秋下)

 【仙洞五十首・建仁元年〈1201〉12月】
   花さそふひらの山かぜ吹きにけりこぎゆく舟のあと見ゆるまで
    (『新古今和歌集』春下)

   あふ坂や梢の花を吹くからに嵐ぞかすむ関の杉むら
    (『新古今和歌集』春下)

   月をなほ待つらんものかむら雨の晴れ行く雲の末の里人
    (『新古今和歌集』秋上)

   霜をまつ籬の菊の宵のまにおきまよふ色は山のはの月
    (『新古今和歌集』秋下)

 【千五百番歌合・建仁2年〈1202〉9月】
   うすくこき野辺のみどりの若草に跡までみゆる雪のむら消え
    (『新古今和歌集』春上)

   片枝さすおふのうらなし初秋になりもならずも風ぞ身にしむ
    (『新古今和歌集』夏)

 【水無瀬殿恋十五首歌合・建仁2年〈1202〉9月】
   きくやいかにうはの空なる風だにも松に音するならひありとは
    (『新古今和歌集』恋三)

 【新古今和歌集を現存最古の出典とする・元久2年〈1205〉3月】
   思ふことさしてそれとはなきものを秋の夕べを心にぞとふ
    (『新古今和歌集』雑下)

 『新古今和歌集』入集歌は例外なく、正治2年(1200)の末から建仁2年(1202)の9月まで、僅か3年弱の間に生み出されたのである。特に、建仁元年(1201)の名歌連発ぶりには脱帽せざるを得ない。彼女は元久元年(1204)11月の「春日社歌合」に出詠しているから、「水無瀬殿恋十五首歌合」の後、少なくとも2年余りは作歌を続けていたことが分かるが、その早すぎた「最晩年」の作品を、後鳥羽上皇たちは『新古今和歌集』に迎え入れなかった。

 神尾暢子氏の『纂修後鳥羽院宮内卿歌集稿』に拠れば、「水無瀬殿恋十五首歌合」より後の作品であることが確実なものは、僅か12首を数えるのみ。もしかすると、この頃の彼女は、歌人として既に燃え尽きていたのだろうか。とはいえ、藤原俊成の「九十の賀」(建仁3年〈1203〉)に際して彼女の詠んだ一連の歌は、没後100年以上を経た14世紀の勅撰和歌集『続後拾遺和歌集』に2首、『新拾遺和歌集』と『新後拾遺和歌集』に1首ずつ採られている。
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by nazohiko | 2013-01-29 00:11 | ◆詩歌を読む
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