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催馬楽には無調音楽がお似合ひ

  音楽的な音のすべては、
  われわれの素質に応じて「調性」に関連づけられねばなりません。

  (中略)

  たとえばアジアで無調音楽が
  現地の聴衆に理解されるというようなことは、十分に考えられます。
  少し前、中国音楽の試演を初めて聴きましたが、
  それは疑いなく概念的には無調に属していました。
  興味深く聴きましたが、理解はできませんでした。
  しかし、たしかな筋から聞いたところによると、
  日本音楽は、われわれの耳にも届くようです。
  つまり、一般論では片付けられません。
  われわれの西洋音楽、われわれの音楽は、
  それ自身の過去を意識し続ける限りでのみ、生き続けることができるのです。

 1931年にウィーンの『新自由報道』紙が行ったアンケート「音楽の未来はあるか?」に対して、指揮者ブルーノ・ヴァルターはこのように答えたという(奥波一秀『フルトヴェングラー』、筑摩選書、2011)。

 伝統的な中国音楽や日本音楽は、西洋クラシック音楽によって定義されるような「調性」や「和声」のシステムに依らないわけだが、ヴァルターの耳には、それが「無調」の音楽として認知されたのである。「西洋クラシック音楽でいう『調性音楽』に当てはまらない楽曲」と「西洋クラシック音楽の新派として、積極的に調性からの離脱を図った楽曲」即ち「無調音楽」の混同や、「中国音楽を理解できなかったのは、無調音楽であったからだ」という理由付けに、回路の短絡を指摘することは容易い。しかし、彼が以上のように発言した目的はあくまで、調性音楽を「われわれの伝統」として擁護する彼の音楽家的立場を表明することなのだから、揚げ足を取るようなコメントを送っても仕方があるまい。

 一方で、これもヴァルターの本旨から外れる部分ながら、アジア(主に日本や中国を指すのだろう)の人々に無調音楽(西洋クラシック音楽の一翼としての)が理解される可能性があるという発想に対しては、私はやや異なる文脈において首肯させられる所があった。「アジアには『無調音楽』の伝統があるから、西洋から発信される『無調音楽』を受け入れるだろう」という彼の論理には、やはり甘さ(二重の甘さ)を指摘せずにおれないものの、それはともかく、日本の伝統的旋律を伴奏するものとして、西洋クラシック音楽の無調音楽がなかなか似合うことを、私は実例によって知っている。

 それは今から20年近く前に、黛敏郎時代の「題名のない音楽会」で1度だけ耳にした、松平頼則の「更衣」である。「更衣」という催馬楽が女声によって歌われ、そこに十二音技法(無調音楽の一種)で作曲された小管絃楽(?)の伴奏が付く。細かいことを憶えていないが、濃密な上昇気流がゆっくりと立ち上るような無調音楽に付き添われて、催馬楽の声音がどこまでも自在に浮遊するといった印象であり、その浮遊感が誠にたまらなかった。オリジンの異なる両者の取り合わせに違和を覚えるどころか、むしろ「コロンブスの卵」的な親和ぶりを目の当たりにしての興奮が後に残った次第である。
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by nazohiko | 2013-01-25 20:38 | ◆音楽を聴く
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