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管絃楽に呑み込まれるドン・ジョヴァンニ

 6年半ほど前に書いた小文「オテロの第一声!」では、デル・モナコがオテロを歌い、カラヤンがウィーン・フィルを指揮した1961年の録音を取り上げた。オテロの第一声である"Esultate!"云々の凱旋宣言において、敢えてデル・モナコの千両役者ぶりを前に出さず、むしろ「ホルンの合奏に溶け入る、一本の管楽器」のような扱いを徹底することにより、却って「神々しい英雄」の登場を強く印象付けるというカラヤンの手法に讃嘆の意を示した次第だが、彼が1985年に録音した「ドン・ジョヴァンニ」にも、これに通じるような技が効果を上げた一瞬がある。

 それは、第1幕でドン・ジョヴァンニが歌う「シャンパンの歌」だ。この不思議な主人公に宿った「エロスの白熱光」を惜しみなく八方に放射する、一点の曇りもないまでに燦然とした音楽である。この只でさえ極端に短い1曲を、カラヤンの指揮するベルリン・フィルは、恐るべき速さと勢い、そして音量で鳴らし始める。サミュエル・レイミーの受け持つドン・ジョヴァンニの声は、フル・スロットルの管絃楽に終始押され気味であり、なおかつ、あれよあれよと進んでゆくテンポを、辛うじて言葉が追いかけてゆくといった感もある。そして、歌い納めの"devi aumentar!"という一声に至っては、それを待ちきれないかのように再度のフォルティッシモ(楽譜上はフォルテなのだが)に入った管絃楽の奔流の中に、ほとんど呑み込まれてしまう。こうしたバランスの設定によって、このアリアを聴く者は「ドン・ジョヴァンニ本人にすら制御できないほどの、巨大なエネルギーの噴出」をまざまざと幻視させられるのだ。
by nazohiko | 2013-01-22 21:47 | ◆音楽を聴く
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