by 謎彦 by なぞひこ
by Nazohiko


桜の詩

  春風
           〔唐〕白居易

  春 風 先 發 苑 中 梅

  櫻 杏 桃 李 次 第 開

  薺 花 楡 莢 深 村 裡

  亦 道 春 風 爲 我 來

    春風は、まず庭の梅を開花させ、
    そうすると桜・杏・桃・李が、相次いで開いてゆく。
    薺(なずな)の花や、楡(にれ)の実もいっぱいの、山奥の村。
    そしてまた春風は、私のためにも吹いてきてくれるのだ。

    はるかぜに 梅の花めざめ
    桜 あんず 桃 すもも ほほゑみ
    なづなの花 にれの実 こぼるる 山ざと
    そのはるかぜに わが衣手は 

桜を詠んだ日本の詩歌は、枚挙に暇ないが、
桜が出てくる漢詩は、日本人の作ったものにも多くない。

今回ご紹介する詩は、
「長恨歌」で知られる白居易(白楽天)の作品である。
中国の文人は、桜よりも梅や牡丹が圧倒的に好きで、
この七言絶句「春風」でも、
やはり桜は、梅にトップスターの座を譲っている。

白居易がこの詩を作ったのは、六十一歳の春のこと。
前年に息子を失ってしまった老詩人の、復活の歌であった。

白居易を愛読していたという菅原道真は、
太宰府へ追放されて以後、
この詩を、どのような気持ちで眺めたことだろう。
かつて、白居易のために吹いた春風は、
道真の胸襟にも、穏やかに吹き込むことがあっただろうか。 # by nazohiko | 2007-03-30 23:36
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by nazohiko | 2007-03-30 23:36 | ☆旧ブログより韻文・訳詩等
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