by 謎彦 by なぞひこ
by Nazohiko


なめとんか

「大阪ソウルバラード」というオムニバスCDを買い求めた。

やしきたかじんの「やっぱ好きやねん」、
BOROの「大阪で生まれた女」、
上田正樹の「悲しい色やね」、
河島英五の「酒と泪と男と女」など、
大阪発のメロディアスな歌が、一枚に詰まっている。

やしきたかじんの歌は、他にも四つ収録されていたが、
「なめとんか」という曲のサビに、私は幾度も聴き耳を澄ました。
作詞・作曲は鹿紋太郎、編曲は若草恵による。

  なめとんか ホンマなめとんか
  うちはあんたのおもちゃやないよ
  言うたろか 今日は言うたろか
  思いつづけて もう二年

(試聴 http://smil.jvcmusic.co.jp/naviram?cd=SE9-20035&sid=ATVE)

「なめとんか」(なめているのか)という大阪弁の啖呵に、
その抑揚や、強弱や、律動を、
見事になぞるような旋律が、当てはめられているのだ。

それだけではない。
ここに掲げたサビ部分には、女声のバックコーラスが付くのだが、
「なめとんか」の箇所だけ、コーラス隊は音符を忠実に追わず、
「なめとんか」と、言い捨てるように発声する。

やしきたかじんのテノールによる「なめとんか」の一喝と、
女声コーラスが、その背後で発する「なめとんか」の一言。
両者の間に、音程の微妙なずれが生じて、
そこに、一種独特の凄味が醸し出されるのである。

女性の怨みを、男性歌手が唱い上げるという、
藤原定家の時代から定番となってきた、美しき仮面劇のお約束が、
ほんの一瞬だけ、意図的に破綻させられ、
本物の女性による「なめとんか」の啖呵が闖入してくることによって、
聴く者を戦慄させる……そんな類の心理効果なのだろうか。

サビ後半の「言うたろか」に関しては、
言葉の抑揚に、旋律があまり沿っていないので、
同じように、コーラス隊による啖呵が重ねられるけれども、
「なめとんか」の箇所に比べて、今ひとつ冴えないようである。

# by nazohiko | 2007-01-17 12:57
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by nazohiko | 2007-01-17 12:57 | ☆旧ブログより論考・批評等
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