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耕野裕子『CLEAR』の復刊

1980年代の終わりから、90年代の初めにかけて、集英社の「ぶ~け」という漫画雑誌を、骨までしゃぶるように愛読していた。

ちょっと目を離している隙に、ドロンと消えてしまった月刊雑誌なのだが、あの頃の「ぶ~け」は、黄金時代という言葉が本当に似合っていた。吉野朔実、竹坂かほり、清原なつの、松苗あけみ、逢坂みえこ、水樹和佳(現・水樹和佳子)、鈴木志保、桐島いつみ、九月乃梨子、稚野鳥子、原田妙子、水星茗などなど、当時の連載作家を、一人ずつ鮮明に思い出すことができる。

かつて「ぶ~けコミックス」として単行本化された作品が、最近になって、朝日ソノラマ文庫で続々と復刊されるようになった。店頭で見かけるまま、あの頃に買いそびれたものを集めているうち、この年末には、耕野裕子の『CLEAR』と再会することができた。昨年の春には出ていたらしい。

連載が幾らか進んでから、この長篇に関心を持つようになったので、当時は物語の発端を知らなかったし、読まずじまいになってしまった号もあるので、今回の通読によって、発端から結末まで、初めて一本の線で繋がった思いである。主人公たちが高校時代を過ごした「H県」は、広島県がモデルになっているらしいことも、おぼろげに分かった。

主人公の斎藤仙太(高校生→専門学校生→漫画家)を除いて、登場人物たちの性格が、それぞれ一面的だという不満を、連載当時から感じていなくもなかったし、彼らが主人公の回りで、御都合主義的に登場と退場を繰り返すなぁという印象も、当時と変わらない。しかし、それはそれで構わないんじゃないか。今になって思うに、この『CLEAR』と題された作品は、仙太による日々の自問自答を、延々と連ねた巻物なのだ。

独白体ではなく、あくまで物語体で執筆されているけれども、本当の意味での登場人物は、仙太一人なのであって、サイ子も西堂も御所河原も、仙太の目に映る限りの存在として、絵巻の中に場所を得るのである。いや、もっと思い切って言えば、仙太という人格の各部を映し出す鑑(かがみ)として、彼の眼前を去来することが、サイ子たちに与えられた役割であるようにさえ見受けられる。

久しぶりに読み返しても、色褪せることのない一篇であった……というか、初読から15年あまりを経て、ようやくすっきりと腑に落とすことができた次第である。この調子で「ぶ~け」掲載作品の復刊が続くなら、次は九月乃梨子の『点点点』あたりをお願いしたい。竹坂かほりの『空のオルガン』も、初めから通して読みたい長篇だ。# by nazohiko | 2007-01-12 22:13
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by nazohiko | 2007-01-12 22:13 | ☆旧ブログより論考・批評等
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