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映画「グラディエーター」寸感

正月休みの何日目だったか,
「グラディエーター」という映画を放送していたので,
ついつい最後まで見届けてしまった。
監督はリドリー・スコット,
出演はラッセル・クロウ,ホアキン・フェニックス等。
グレゴリオ暦でいう紀元後2000年に公開されたそうだ。

「グラディエーター(gladiator)」とは,
古代ローマの剣闘士のことである。
見世物として,大観衆の眼前で殺し合うのが,
奴隷身分に置かれた彼らの,唯一の務めだった。

グレゴリオ暦でいう紀元後一世紀の末,
賢帝マルクス・アウレリウス・アントニヌスは,
名将マキシムスを,後継者にと望んでいた。
ローマ皇帝の位は,必ずしも世襲ではなく,
マルクス・アウレリウス・アントニヌスもまた,
血の繋がらない先帝の養子となって,帝位を継いだのだった。

しかし皇子コンモドゥスは,これを快く思わず,
父を謀殺して,帝位を奪ってしまったばかりか,
自分の地位を脅かしかねないマキシムスを処刑しようとする。
間一髪のところで,逃走に成功したマキシムスは,
負傷して倒れていたのを,奴隷商人に売られ,
剣闘士として生きてゆくことを余儀なくされるが,
彼は,持ち前の剣術や統率力に物を言わせて,
スーパースターへの階段を上ってゆくのだった。

ネロ,カリグラ,ヘラガバルスと並んで
ローマ史上に輝くバカ殿となり果てていたコンモドゥスは,
かつて処刑を命じたはずのマキシムスが,
剣闘士として御前試合に現れたのを見て,ひどく恐懼し,
元老院議員たちは,マキシムスの生存を知って驚喜する。

マキシムスに,再び軍隊を率いさせて,
コンモドゥス打倒のクーデターを起こそうという機運さえ,
議員たちの間に醸されてきた中にあって,
愚昧と狂気の度が,いよいよ頂点に達した皇帝は,
自ら剣闘士となって闘技場(コロセウム)に降り立ち,
マキシムスと直接対決することを決意する。

卑劣なコンモドゥスの手により,
マキシムスは,闘技場の裏で腹部を刺されてしまうが,
その刀傷を隠しながら,宿敵コンモドゥスを討ち果たす。
現職の皇帝が斬殺されるという非常事態でありながら,
親衛隊は,その様子を冷ややかに眺めるばかりだった。
喝采の声を浴びながら,力尽きたマキシムスは倒れてゆく。

マルクス・アウレリウス・アントニヌスの後を
皇帝の器ではないコンモドゥスが継いだせいで,
ローマ帝国の最盛期が,ついに終わってしまったことや,
彼が剣闘士の真似事にうつつを抜かしているうちに,
誰からも見限られて暗殺されたことは,いずれも史実である。

一方,マキシムスという人物は実在しなかったそうだし,
コンモドゥスが父帝を殺して即位したという証拠もない。
まして,彼は剣闘競技の場で落命したのではないけれども,
この映画は,史実と虚構を巧みに組み合わせ,
ローマ史マニアにとって,極上のごちそうと言うべき一篇だった。

また,主役側の登場人物たちの行動が,
「帰るために闘う」というキーワードによって,一貫していたこと。
マキシムスにとって,この物語は,
妻子の待つ故郷に帰還するための,闘いの過程であった。
妻子がコンモドゥスに虐殺されたことを知って以後は,
せめて命と引き替えにコンモドゥスを倒して,
妻子の待つ楽園へ往きたいという悲願が,彼を動かし続けた。

コンモドゥスの姉ルキッラや,元老院議員たちにとっては,
それは,撹乱されたローマ帝国をコンモドゥスから奪い返し,
先帝マルクス・アウレリウス・アントニヌスが目指していた
善政の道に復帰させてゆくための,闘いの過程だったのである。

マキシムスとコンモドゥスが,
見物客たちの前で「相討ち」を遂げたことにより,
マキシムスの悲願も,
ルキッラや議員たちの悲願も,とりあえず成就した。

マキシムスが,闘技場の砂の上で息絶えた時,
ルキッラは一言「帰った」と呟くのだったが,
ラストシーンで発せられた,この言葉こそ,
二時間余に及んだ映画を,力強く完結させる言葉だったのである。
「帰った」のは,マキシムスだけではない。
ルキッラ自身も,居並ぶ議員たちも,
彼ら一人一人の闘いが,この瞬間に終わったことを自覚していた筈だ。# by nazohiko | 2007-01-09 21:35
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by nazohiko | 2007-01-09 21:35 | ☆旧ブログより論考・批評等
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