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トゥーランドット(7)

 プッチーニの歌劇「トゥーランドット」は、豪奢なファンファーレに続いて、最終場面になだれ込む。命懸けの賭けを制したカラフ青年が、トゥーランドット姫を得るラストシーンは、祝福の大合唱が轟く中を、しかし僅か20小節あまりで終わってしまうし、主人公であるはずのカラフが、ついに一言も発しない。

 この最終場面も、最終場面を導く長大なファンファーレ(舞台装置を換えるための時間でもある)も、プッチーニ自身の作曲ではない。歌劇の完成間近で没したプッチーニに代わって、アルファーノという作曲家が補った部分なのであり、初演にあたって指揮者のトスカニーニが一部カットして、現行の形になった。

 物語として一応の格好が付く、最小限の補筆に止めたために、このような最終場面になってしまったのだろう。それはそれで一つの見識だとは思うけれども、やはり私には不満が残った。プッチーニの在世中に仕上がっていた台本では、カラフも歓呼の声を上げるのだ。主人公が黙ったままのラストシーンなんて面白くない。

 そう思い続けていたのだが、昨晩カラヤン指揮のCDで最終場面の音楽を聴き、脳内麻薬ダラダラの状態に至った時、ふと一つの解釈が閃き出た。この最終場面は現実ではなく、ハッピーエンドを目前にしたカラフが、昂奮の中で見ている白昼夢なのではないか。生身のカラフではなく、夢の世界の登場人物として舞台に現れたカラフだからこそ、ひとり無言のまま、燦然たる大合唱に聴き惚れているのだ。

 そもそも「トゥーランドット」と題されていながら、この歌劇はトゥーランドットの物語ではないし、カラフとトゥーランドットが対等に絡み合う物語でもない。カラフの燃えさかる野心と欲望が、歌劇のすべてを動かしてゆくのである。「他者認知」などという言葉には、一から十まで無縁なカラフ。そんな歌劇の終着点として相応しいのは、「カラフとトゥーランドットのハッピーエンド」としてではなく、あくまで「オレ様のハッピーエンド」としてのロイヤル・ウェディング(姫君の獲得)ではあるまいか。

 アルファーノやトスカニーニの意図には反する解釈なのかもしれないが、彼らによって制作された最終場面は、カラフを黙り役の立場に置いたことによって、それがカラフの白昼夢であるという解釈や、最終場面の主題が「カラフの願望の成就」であるという解釈の可能性を、私に与えてくれた。そして、最終場面に先立つ長々としたファンファーレは、白昼夢に向かって脈拍と血圧を昂進させてゆくカラフを表すように、響き始めるのである。脳内ハッピーエンドの光景をしばらく楽しんだ後で、カラフは着替えを済ませて、実際の婚礼に赴くことだろう。

「トゥーランドット」の最終場面は、こちらをどうぞ。
http://www.youtube.com/watch?v=JdWRC2kf-MU

最終場面の音楽を、陶酔120%で指揮真似する青年の映像。
そう、カラフとはこういう人物像だと思うのですよ。
http://www.youtube.com/watch?v=jqeoOQiqv_0

# by nazohiko | 2006-12-03 22:25
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by nazohiko | 2006-12-03 22:25 | ☆旧ブログより論考・批評等
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