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『物語集』を推す

秋葉原駅で降りて、
「文学フリマ」という催物に足を運んだ。
私の目当てにしていたのは、
石川美南さんと橋目侑季さんの出店「山羊の木/海岸印刷」である。
石川さんに声を掛け、橋目さんに初対面の挨拶をして、
刊行を楽しみしていた『物語集』を購入した。
すべて「~~話」で終わる石川さんの短歌を、
橋目さんが活版印刷して、装幀された作品である。

微妙な凹凸のある濃紺色の紙に、銀色のインクという、
平家納経を連想させる配色の、名刺サイズのカード。
一枚に一首ずつ短歌が刷られたものを、
綴じない代わりに、まとめて黒い小箱に収めてある。
小箱の表には、往年の文芸書さながらに、
「物語集 石川美南」のシンプルな題箋が貼られている。

  銀ぶちの眼鏡をかけて二人ゆく悪のみち華やかなる話
  失ひし言葉を捜す旅路にてななたび落とす命の話
  空腹のあまり選手を喰らひたる鬼監督の凄い歯の話
  菜箸をひら、とあやつり赤鬼をつまみあげたり 昔の話
  「発車時間を五分ほど過ぎてをりますが」車掌は語る悲恋の話
  上野にて一組の靴を分けあひし人と再びまみゆる話
  くすぐつたいかゆいこそばいこそばゆい誓ひのことば詰まつた話
  諦めたそばから文字の色褪せて今はすつかり読めない話

活版ならではの僅かなかすれや、
金属活字が紙に食い込んだ跡が、
ついつい初心を忘れてしまいがちな
「本に向き合うよろこび」や「本を受け取るよろこび」を、
うずうずと思い出させてくれるようだ。

印刷されたコンテンツが秀でているだけでなく、
装幀がそれ自体として風雅であるだけでもなく、
コンテンツと装幀が、
息もぴったりに結ばれ合っていることこそが、
この『物語集』の最大の勝因だろう。
もとより大量出版を目指さない、歌集というジャンルなのだから、
これからの歌集は、もっと十人十色に、
印刷や装幀に凝りまくるべきではあるまいか。
「~~まくる」という補助動詞の語気、ここ重要ね。

そんなことを考えさせられたという意味も含めて、
石川さんと橋目さんの合作になる『物語集』は、
今年に刊行された数多の歌集の中で、
最も印象的な「一箱」であったと言っても、過言ではない。

お二人の出店では、
同じく活版印刷によるブックマークのセット「寂しい栞」や、
冊子形式の歌集『小清水さんが建てた家』も購入した。
かくなる上は、石川さんの伝説的大作「祖父の帰宅/父の休暇」も、
お二人の工房「海岸印刷」から、
何らかの瞠目すべき造本によって刊行されることを、
切に希望せずにはいられない。# by nazohiko | 2006-11-12 21:36
by nazohiko | 2006-11-12 21:36 | ☆旧ブログより論考・批評等
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