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あんなベートーヴェン

"The Unheard Beethoven"のウェブサイトでは、
ベートーヴェンの未完成作品や草稿に、
現代の好事家が補筆して、
曲としての格好を整えたものも、MIDIで聴かせてくれる。
http://www.unheardbeethoven.org/

この種の「補筆完成版」には、
がっかりさせられることが多いものだが
それらの中で、1791年または93年に着手されたという
ハ短調交響曲の第1楽章は、なかなかの聴き物だと思う。
補筆完成を手がけたのは"Willem"氏。
http://www.unheardbeethoven.org/midis/hess298.mid

同じウェブサイトに、
未完成の楽譜を、そのままMIDIにしたものも公開されている。
http://www.unheardbeethoven.org/midis/hess298b.mid

もし作曲者自身によって完成させられていたなら、
交響曲第1番と呼ばれていたはずの、20代前半の試みだった。
現在「交響曲第1番」として知られている、全く別の作品は、
作曲者が30歳を迎えた1800年に、ようやく現れることになる。

とはいえ私は、この補筆完成版を、
「ベートーヴェンの交響曲」として楽しみたいのではない。
作曲者自身による草稿(ピアノ用)は、
ソナタ形式の楽曲が「提示部」「展開部」「再現部」から成るうちの、
提示部まで、既にあらかた出来上がっており、
それはつまり、再現部の楽譜も残っているようなものだから、
そうした部分については、一応の安心感をもって、
補筆完成版の響きに「ベートーヴェンの音楽」を聴き取ることは可能だ。

しかし、この補筆完成版は、
草稿のピアノ譜を、管絃楽用に編曲するにあたって、
明らかに、後年の交響曲第3番や第5番を模倣している。
「運命」や「英雄」そっくりに鳴りわたるオーケストラは、
ベートーヴェン初期の管絃楽曲に、ちっとも似ていないのだ。
ゼロから補作された展開部についても同様である。
楽章全体を締め括る一段を、
まるで第2の展開部のように、大きく膨らませた構成まで含めて、
多くの人が、「運命」や「英雄」を連想させられるだろう。

私は、この補筆完成版を、
現代のベートーヴェン愛好家による、
ベートーヴェンに対する愛情の表現として、楽しみたいと思う。
あくまでそれは、
中期以降の作品と、数々の偉人伝を通して形作られた
「楽聖ベートーヴェン」のイメージに
向けられる愛情に他ならないわけだけれども、
それはそれで構うまい。
私にも、そういうところがあるから。
「英雄もどき」や「運命もどき」な作曲や編曲の試みとしても、
まずまずの巧さだと思うので、
その意味でも、やかましいことを言わずに楽しむことができる。

※補筆完成版の構成は、
   0:00-2:15 提示部
   2:15-4:28 提示部の反復
   4:29-5:42 展開部
   5:42-7:57 再現部
   7:58-8:49 終結部

# by nazohiko | 2006-11-11 16:14
by nazohiko | 2006-11-11 16:14 | ☆旧ブログより論考・批評等
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