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さすらう学人の歌(6)

脱線のつづき。

会津八一の最終歌集となった『寒燈集』に、
「雲際」と題された7首が載っている。
1945年4月13日の空襲によって、
蔵書や収集品もろとも、自邸が全焼した体験を詠んだ
「焦土」8首の直後に置かれた一連である。

   四月三十日三浦寅吉に扶けられて羽田より飛行機に乗りてわづか
   に東京を立ち出づ

  おほそらをわたればさむきころもでにせまりてしろきあめのたなぐも
  うらぶれてそらのくもまをわたりくとふるさとびとのあにしらめやも

   やがて松ヶ崎なる新潟飛行場に着して

  みやこべをのがれきたればねもごろにしほうちよするふるさとのはま
  おりたてばなつなほあさきしほかぜのすそふきかへすふるさとのはま
  わたりこしみそらはるけくしらくものむれたつなかにいるこころかも

   新潟の浜にて

  ふるさとのはまのしろすなわかきひをともにふみけむともをしぞおもふ
  ふるさとのはまべのをぐさふみゆかばけだしやあはむわかきひのとも

失意と動揺の中で、
故郷への緊急避難を図ったフライトであり、
当時の航空水準や戦況からして、
かなりの緊張感に迫られる幾時間であっただろう。
あと3ヶ月で逝ってしまう、
病身のきい子を抱えての旅でもあった。

なのに、会津はそんな逃避行に、
「おほそらをわたれば」
「そらのくもまをわたりく」
「わたりこしみそらはるけく」といった言葉を与える。
あまつさえ、
「さむきころもで」という、
およそ飛行機には似合わないであろう語彙によって
(実際には、防寒用のコートを着ていたのだろうが)
会津は機中にある自身の姿を、
「場違いの悲喜劇」味を帯びつつ垣間見せるのである。

私は、「雲際」に収められた3首の飛行詠を目にする度、
アニメ「一休さん」のオープニングを連想してしまう。
青空に架かった七色の虹の上を、
僧服姿の一休さんが渡ってゆくシーンがあったはずだ。
老境の会津が「さむきころもで」を気にしながら、
焼尽の東京から故郷の新潟まで、虹の橋を漫歩してゆく……。
そんな有様を、唐突にも想像させられるようで、
これらの歌は、
哀しくて、可笑しくて、懐かしくて、かっこいいのだ。

ところで、きい子の写真を見ることができた。
おそらく誰が見ても、
今をときめく「青木さやか」に瓜二つである。
「自己意識の強く、批評的態度にて一々屈せざる風ありし」と、
会津は、きい子のことを語っていたけれども、
そんな彼女に、ふさわしい風貌と言えるかもしれない???

※続く

# by nazohiko | 2006-11-07 12:15
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by nazohiko | 2006-11-07 12:15 | ☆旧ブログより論考・批評等
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