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さすらう学人の歌(5)

脱線ついでに、もうひとつ。

会津八一が語られる場合には、
必ずと言ってもよいほど
半生の全歌集である『鹿鳴集』(1940年、60歳)から
短歌が引かれるもので、
それより後に刊行された『山光集』(1944年、64歳)と、
生前最後の歌集となった『寒燈集』(1947年、67歳)が
話題に上る機会は少ない。

もっと厳密に言えば、
30年間の歌業を集成した『鹿鳴集』の中でも、
第1歌集『南京新唱』の所収歌を初めとする
比較的前期の作品にばかり、
注目が集まりがちであるようだが、
晩年の会津短歌も、なかなか佳いのだよ。

かつて上田三四二は、
『寒燈集』に収められた2つの連作を評して、
次のように述べた。

  昭和二十年(一九四五)八月、八一はながい詞書をもつきい子追
  悼の「山鳩」二十一首と、独居の生活をうたう「観音堂」十首を
  作った。私は、会津八一の晩年は、この「観音堂」の一連によっ
  て、はじめて、初発の「南京新唱」に見合う無類に透明な寂しさ
  の境地に到達したと考える。

会津八一の短歌が、
『南京新唱』を最初のピークとして、
それっきり長い低迷期に入ってしまったという
上田の意見には、私も異論がない。
中途半端な正岡子規調と、
中途半端な万葉語趣味が、
中途半端な身辺雑記風の歌ばかり生み出した時期であると、
とりあえず定義しておきたい低迷期であり、
そうした歌によって、
『鹿鳴集』の後半部分と『山光集』が、
程度の差こそあれ、おしなべて埋め尽くされている。

しかし、晩年の『寒燈集』が、
『南京新唱』の再燃であるかのような見方には、
部分的にせよ同意できない。
『寒燈集』は、会津短歌の新しい地平を示した歌集であると、
私はどうやら直感するようなのである。

私は、会津壮年の古都詠について、
まるで皮膚から沁み入ってくるような感触を覚えながらも、
そんな短歌たちを、
持ち合わせの言葉で腑分けすることができないと
「さすらう学人の歌(2)」に記したが、
晩年の境涯詠についても、まるで右に同じだ。
かといって、上田のように、
大味な評語で片付けてしまうことも、
私には肯んじ得ないので、
上田も賞賛した「山鳩」と「観音堂」から、
幾つかの歌をご紹介することで、お茶を濁したい。

  やまばとのとよもすやどのしづもりになれはもゆくかねむるごとくに
  あひしれるひとなきさとにやみふしていくひききけむやまばとのこゑ
  やすらぎてしばしいねよとわがことのとはのねむりとなるべきものか
  ひとのよにひとなきごとくたかぶれるまづしきわれをまもりこしかも
  かなしみていづればのきのしげりはにたまたまあかきりうたんのはな

  くわんおんのだうのいたまにかみしきてうどんのかびをひとりほしをり
  かたはらにものかきをればほしなめしうどんのひかげうつろひにけり
  かどがはのいしにおりゐてなべぞこのすみけづるひはくれむとするも
  うゑおきてひとはすぎにしあきはぎのはなぶさしろくさきいでにけり
  ひそみきてたがうつかねぞさよふけてほとけもゆめにいりたまふころ

このようにプロポーショナル・フォントで表示されると、
どれも平仮名31字から成る文字列だというのに、
互いに長さが違ってくることに気付かされる。

※続く

# by nazohiko | 2006-11-07 00:56
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by nazohiko | 2006-11-07 00:56 | ☆旧ブログより論考・批評等
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