by 謎彦 by なぞひこ
by Nazohiko


くらしにきのこを!

某書店に赴いて、雑誌「きのこ」を購入した。歌人のIさんが「きのこコーナー」設置のため、特に仕入れられたものだという。

「きのこをめぐるカルチャーマガジン」なのだそうで、現在までに刊行された全ての号に、「くらしにきのこを!」というスローガンが太々と刷り込まれている。

とりあえず第2号を買ってみたのは、「小特集:冬虫夏草の世界」の文字に惹かれたからだが、この号の大凡を紹介すると……。

まず扉絵として、妖精たちと茸を描いたアーサー・ラッカムの作品が掲げられる。小特集「冬虫夏草の世界」には冬虫夏草(昆虫や蜘蛛の体から茸が生え伸びたもの)の写真だけでなく、それをモティーフとした陶芸作品や絵画までもが並ぶ。

引き続いて、茸好きの音楽家であるらしいチチ松村のインタビュー記事があり、「お菓子なきのこ」と題する連載には、今回は松露饅頭や松露団子が採り上げられている。それから茸料理の講座もあり、茸を食べれば頭が良くなるという講義もあり、また「ヘルシーな菌食の世界」と題して、「きのこの友達・酒」についても、造り酒屋の当主によって蘊蓄が傾けられる。

茸モティーフのネイル・アート、手編みの茸人形、茸をあしらったディオラマが数珠繋ぎに登場した後には、茸に関する本の書評、毒茸中毒のケース・スタディ、茸についての研究会や巡検の案内板といった硬派なコンテンツが続く。

連載「書画の中のきのこたち」では、西山宗因の発句「松が根に千代の影さすしめじかな」が、書家によって揮毫され、この第2号から始まった「映画の中のキノコたち」では、日本映画「かもめ食堂」がトリヴィアルに批評される。

読者投稿による茸の写真集は「一期一会のきのこの名優たち」と銘打たれており、ちょっと長めの科学読物「ロシアのきのこ」を読み切ったところで今号のエンディングとなるが、奥付の後に、茸料理専門店の広告が2つ載っていることに、読者はしっかりと気付かなければならない。

●茸に対する愛情が、ありありと溢れていること。

●茸の面白さを多くの人々に伝えようという熱意にも、溢れていること。

●入門者から上級者まで、各者各様に楽しめそうな内容であること。

●一個のエンターテインメントとして、合格の水準にあること。
 (内輪ウケや嘲笑の対象として脚光を浴びるべき雑誌ではない)

以上4つの理由により、私は雑誌「きのこ」の胞子に感染してしまった次第である。# by nazohiko | 2006-10-03 00:11
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by nazohiko | 2006-10-03 00:11 | ☆旧ブログより論考・批評等
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