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藤原三大テノール(5)

『古今著聞集』に、藤原家隆をめぐる説話が出てくる。

  かの卿(=家隆)非重代の身なれども、
  よみくち世のおぼえ人にすぐれて、
  新古今の撰者に加はり、
  重代の達者定家卿につがひてその名をのこせる、
  いみじき事なり。

  まことにや、
  後鳥羽院はじめて歌の道御沙汰ありける比(ころ)、
  後京極殿(=藤原良経)に申し合せまゐらせられける時、
  かの殿(=良経)奏せさせ給ひけるは、
  「家隆は末代の人丸にて候ふなり。
  彼が歌をまなばせ給ふべし」と申させ給ひける。

藤原良経は家隆を「現代の柿本人麻呂」と評し、後鳥羽上皇に家隆の和歌を学ぶよう勧めたというのである。

ここで良経は、彼自身の歌風に言及していないし、定家についても触れていないが、なるほど「藤原三大テノール」の中で、良経と定家の歌は、良くも悪くも「お手本」として使えそうにない。この説話は、人麻呂を引き合いに出すことによって、単に家隆を大歌人として称揚するだけでなく、家隆作品に備わる一種の古典的円満性(作風が人麻呂に似ていなくても構わない)を、それとなく掬い上げているようでもある。

もうちょっと穿った見方をするならば、説話の筆者は、上皇の歌が帯びることの多い暖色系のトーンを、家隆の歌に通じるものとして感受していたのかもしれない。 # by nazohiko | 2006-09-21 00:27
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by nazohiko | 2006-09-21 00:27 | ☆旧ブログより論考・批評等
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