by 謎彦 by なぞひこ
by Nazohiko
最新の記事
4月1日
at 2017-04-01 21:12
君よ知るや「カニのタルト」
at 2017-03-31 15:18
君よ知るや汝窯の青磁水仙盆
at 2017-03-09 23:15
君よ知るや台湾紅茶と台湾ウィ..
at 2017-03-08 21:30
当たり前ポエムと言えば……。
at 2017-03-08 00:32
カテゴリ
全体
◆小説を読む
◆小説を読む(坊っちゃん)
◆論考を読む
◆詩歌を読む
◆漫画を読む
◆動画を視る
◆音楽を聴く
◆展覧を観る
◇詩歌を作る
◇意見を書く
◇感想を綴る
◇見聞を誌す
☆旧ブログより論考・批評等
☆旧ブログより随想・雑記等
☆旧ブログより韻文・訳詩等
☆旧ブログより歳時の話題
★ご挨拶
以前の記事
2017年 04月
2017年 03月
2016年 11月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 03月
2015年 07月
2015年 05月
2015年 02月
2014年 04月
2013年 07月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 08月
2007年 06月
2007年 05月
2007年 03月
2007年 02月
2007年 01月
2006年 12月
2006年 11月
2006年 10月
2006年 09月
2006年 08月
2006年 07月
2006年 06月
2006年 05月
2006年 04月
2006年 03月
2003年 08月
2003年 07月
2001年 04月
検索


機内でワーグナー(3)

オペラの歌詞として、極端に言えば「音楽の添え物」として、ワーグナーの綴った言葉に触れていた時には、特に気に留まらなかったことだが、「オランダ人」は素寒貧の幽霊船を乗り回しているわけではないのだ。大抵の船なら足許にも及ばないほどの俊足であるらしく、船倉には「世にも珍らしい寶」「高價な眞珠、貴重な寶石」が満載されている。そして、これらの船自慢は、彼自身の口から上陸地の人々に語られるのである。

彼は「さすらひのオランダ人」としての境遇に、むしろ自信や得意さえ抱いてきたのではないか。それに、彼は船上でひとりぼっちでもない。腕利きの水夫が帆綱や舵輪を預かっているのであり、これらの水夫もまた「血と燃ゆる帆に、黒きマストの船」での暮らしを、必ずしも嫌ってはいないようだ。

私はこの歌劇を、やはり「さすらひのオランダ人」の物語として咀嚼したい。それは、俗世から疎外された身を持て余し、俗世へ帰還するチャンスを待ち望みながら、しかし一匹狼(あるいは反俗者たちのリーダー)としての矜恃も溢れるばかりに持ち合わせた、自意識と能力の高い壮年男性の物語である。彼のことを、「主役のゼンタ」を受け入れるためだけに、舞台に呼び出された木偶的人物であるとは思えない。

むしろゼンタの方こそ、「オランダ人」の去就に刺激を与えるだけの脇役ではなかろうか。最初から最後まで、自分が「救済の乙女」であることを高唱するばかりのゼンタは、物語を前へ進めるための装置としては十分に鮮烈だが、人物造型においては極めて大味かつ平板であり、ほとんど人の形を成していないようですらある。

※続く

# by nazohiko | 2006-09-15 00:33
[PR]
by nazohiko | 2006-09-15 00:33 | ☆旧ブログより論考・批評等
<< 機内でワーグナー(4) 機内でワーグナー(2) >>