by 謎彦 by なぞひこ
by Nazohiko


ヤンソンス指揮の新年演奏会

先程までNHK教育テレビで、マリス・ヤンソンスが指揮した、ウィーン・フィルの今年の新年演奏会を聴いていた。毎年1月1日の昼に、「ワルツ王」ヨハン・シュトラウスの作品を中心として、祝賀的ムードの音楽会が開かれるのだ。この20年来、毎回違った指揮者がタクトを振るのが慣例である。

今年の元旦は旅先にあったので、生中継を見損ねてしまったのだが、そもそもヤンソンスとウィンナ・ワルツやポルカの組み合わせに、あまり期待が持てなかったため、後日CDやDVDを購入することもしていなかった。

今晩は「N響アワー」を見終わったついでに、新年演奏会の再放送を、2,3曲ほど試聴してみようかという程度の興味で、テレビを付けたままにしておいたのだけれども、一聴して私は、この再放送を見逃さなかったことを僥倖だと思った。

ヤンソンスの指揮する数々の舞曲は、自身の故郷であるロシアの音楽(例えばリムスキー=コルサコフの作品)を連想させるような、ゴージャス感と高テンションに彩られ、ユーモラスな表情にも満ちていて、聴く者を心底ゴキゲンにするものだった。緩急や強弱の間を、音楽が行き来する時の推移曲線や、管絃楽が全休止する時の、たっぷりとした間も印象的であった。

つまり、ウィンナ・ワルツやポルカの演奏流儀としても、新年演奏会という場の文脈においても、ヤンソンスは「紛れもなくヤンソンス色の奏楽」でありつつ、なおかつ「聴衆の期待と決して齟齬しない奏楽」でもあるものを、その場に実現していたと言える。ヤンソンスは新年演奏会に似合うまいという先入観を、私は嬉々として撤回せざるを得ない。

ヨハン・シュトラウスのポルカ「ハンガリー万歳!」は、歴年の新年演奏会で幾度も採り上げられた速い舞曲だが、いまひとつ盛り上がらずに終わったり、動きにまどろっこしさを残したりすることが多かった。ヤンソンスは、1989年に指揮したカルロス・クライバー以来、久しぶりに満足のゆく「ハンガリー万歳!」を聴かせてくれたと思う。プログラムの最後に置かれていたのは、やはりヤンソンスとウィーン・フィルとしても、演奏の出来に自信があったからだろうか。

管絃楽の力量としては、「美しく青きドナウ」の前奏を初めとして、いつもながらチェロパートの美音と合奏力に感嘆させられた。ウィーン・フィルのチェロを聴いていると、たった1人で弾いているかのように錯覚することすらある。それほど凄腕のチェロ奏者たちである。胸のすくほどに雑味を除き去った、まるで「おいしい水」のようなクラリネットにも、惜しみない拍手を。# by nazohiko | 2006-09-04 00:50
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by nazohiko | 2006-09-04 00:50 | ☆旧ブログより論考・批評等
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