by 謎彦 by なぞひこ
by Nazohiko


ベートーヴェンの第3交響曲

昨晩、帰宅してクーラーとテレビを付けたら、パーヴォ・ヤルヴィの指揮するドイツ室内フィルハーモニー管絃楽団が、ベートーヴェンの第3交響曲を演奏していた。

既に最終楽章(第4楽章)に差しかかっていたが、いきなり目に留まったのは、クラリネット奏者たちがベルアップして、主題旋律を吹き鳴らしたことである。普段は足許に向けて吹くクラリネットを、トランペットのように持ち上げて吹くことによって、音響的にも視覚的にも存在感が高まる。ベートーヴェン時代の作品に対しては、めったに使われない奏法だ。そのようにして、クラリネットの動きを管絃合奏の中から、ソロ風に浮き立たせていたわけである。

そのまま演奏を見守っていると、主題旋律がホルンに委ねられる場面でも、やはりホルンの音量や歌い回しが、ソロ風に突出させられているように思われた。これらの他にもいくつかの箇所で、同様の処理が施されていたようである。珍しいタイプの演奏ではあったが、これはこれで楽曲の作りに適った、自然な解釈ではないかと感ぜられ、気持ちよく聴き終えることができた。

概してベートーヴェンの交響曲には、オーケストラ全体が1つの楽器のように扱われ、「個」の突出は厳しく禁じられているという印象があったのだが、今回のヤルヴィとドイツ室内フィルによる演奏に触れてみて、必ずしもそうではないことを教えられた。第3交響曲の最終楽章は、変奏の形式で作られており、同じ旋律が姿を変え楽器を替えながら、繰り返し出現する。そこでベートーヴェンとしては例外的に、協奏曲的な要素(ソロ風の楽器が適宜登場して、変奏をリードしてゆく)を、交響曲の中に持ち込んだのかもしれないが。# by nazohiko | 2006-07-17 19:59
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by nazohiko | 2006-07-17 19:59 | ☆旧ブログより論考・批評等
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