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オテロの第一声!

シェイクスピアの話とオペラの話に橋を架けて、今晩はヴェルディの歌劇「オテロ」のことを。

シェイクスピアの「オセロウ」によるこのオペラは、暴風雨の中の海戦を終えて、オテロ(オセロウ)率いる船団がキプロス島に凱旋してくる場面から始まります。原作では第2幕に当たる部分ですね。海戦の帰趨や、オテロの安否をハラハラと見守る群衆の合唱が、盛り上がりに盛り上がったところで、帰還を果たしたオテロが第一声を轟かせます。

  Esultate!
  L'orgoglio musulmano
  sepolto è in mar;
  nostra e del ciel è gloria!
  Dopo l'armi lo vinse l'uragano.

  喜びたまへ!
  傲岸なる回教徒ばらは海原の藻屑と消えぬ。
  栄光は我らと我らの神のもとにこそあれ!
  大嵐が我らに加勢し、敵船に追い討ちを与へたり。

これだけ歌い終えるや、長居せずに舞台を去ってしまうので、第一声の輝かしさが、いっそう印象に残るのです。回教徒やトルコ人には親戚のいない私は、歌劇「オテロ」といえばこの部分がとにかく好きで、様々なテノール歌手による"Esultate!"を聞き比べてきました。

どちらかと言えば、ラウリッツ・メルヒオールのように「英雄の体臭」を発散させるような声音と、千両役者にのみ似合う若干わがままなフレージングが、私の求めるオテロ第一声なのですが、そうした中にあって、まるでスタイルが違っていながら、私を捉えて放さないのが、マリオ・デル・モナコの1961年の録音です。管絃楽は、ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮するウィーン・フィルハーモニー。

当時「世界最高のオテロ歌い」と称され、「黄金のトランペット」の異名を取っていたデル・モナコですが、このカラヤン盤での歌い出しは、意外なほど淡白というか、幾分「器楽的」に過ぎるというか……。十分に輝かしい「黄金色」の響きであるにも関わらず、いまひとつ「英雄オテロの肉体」が匂い立たないのです。しかし、よく聴いていると、オテロの声を支えるホルンの和音のいつにない力強さと、それが"nostra e del ciel è gloria!"の段から、メキメキとクレッシェンドしてゆくことに気付かされます。そして、最後の"Dopo l'armi lo vinse l'uragano."に至って、ホルンたちの強奏は、あたかも後光のようにオテロを包み込むことにより、何とも神々しい姿の「英雄」を現出させるのです。おお、カラヤン・マジック!

いまどきの言葉を使うなら、

  神キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!

の嘆声を捧げるべき風情でありましょう。

それは、天下のデル・モナコに、あえて「ホルンの合奏に溶け入る、一本の管楽器」に徹することを要求したからこそ、成功した芸当です。カラヤンの指揮するオペラは、むしろ「独唱と合唱の付いた交響曲」だと評される一面がありますが、このオテロ第一声などは、「あくまで主役はカラヤン」であるところの音楽世界を、典型的に主張した一齣だと言えるでしょう。

ちなみにこの箇所は、CD販売サイトで「試聴箇所」として公開されていたり、テノール歌手の公式サイトに「私の歌唱のサンプル」としてアップされていることが多いです。"esultate"で音声ファイルを検索すると、結構たくさん出てきますので、ぜひ十人十色のオテロに触れてみて下さい。# by nazohiko | 2006-06-28 00:05
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by nazohiko | 2006-06-28 00:05 | ☆旧ブログより論考・批評等
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