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馬のための私の王国!

"A horse! A horse! My kingdom for a horse!"
(馬をよこせ! 馬をよこせ! 馬の見返りに我が王国をくれてやる!)

シェイクスピアの史劇「リチャード3世」の大詰め近くで、
敗走するリチャード3世が、このように叫びます。
玉座を逐われたリチャードの、これが最後の台詞となり、
続く最終場面では、彼の白兵戦のありさまと、
やがて彼が討ち死にしたことが、私たちに伝えられるのです。

私は、この台詞に初めて触れた時から、
リチャードがとうとう王者として君臨する野望を捨て、
ひたすらに命を惜しんでいるのだとばかり、解釈してきました。
もう天下なんて狙わないから、命だけは持って逃げたい!

後になって、これはむしろnever give up宣言なのだという解釈も
あることを知りました(松岡和子氏の文章に載っていたのだったか?)。
自分に機会さえ与えてくれるならば、王国の1つや2つくらい、
また手に入れてみせるぞ、という風にも読めるわけです。

「どちらか正しい方を選べ」と言われても、
もう片方を排除するに足るだけの決め手となると、見当たりません。
かといって、「この台詞には両方が含まれているのだ」という
単純な折衷案でも片付かないように、今の私には思われます。
もうちょっと複雑な心理の構造を、
読み出そうと思えば、読み出せるような気がするのです。

強いて黒か白か一方を取るなら、 never give upの方でしょうか。
「"王国なんてもの"はくれてやる!」でもなく、
「"あんな"王国などくれてやる」でもなく、
「"我が"王国をくれてやる!」という言葉遣いであることから察するに、
リチャードは「王国というものに君臨すること」自体を放棄したというより、
かつて自分が玉座に就いた、イングランドという具体的な王国に、
あくまでも執着しているのかもしれません。
リチャードにとって、イングランドとは、
一時は手放すことがあろうとも、いずれ自分の手中に帰するべきもの……。

そして、そのような解釈に傾いてみた場合に、
「リチャード3世」と「マクベス」の違いが、鮮やかになってきます。
いずれの主人公も、先王を暗殺して自ら王冠を戴きますが、
やがて、次代の国王となる者に攻め込まれ、討ち死にしてゆきます。
似通った要素を、いくらでも数えられる2つの劇なのですが、
マクベスが「初めから、負けを気にしてばかりの人物」であるのに対し、
リチャードは「最後まで、負けん気で押し通した人物」として、
特徴付けられることになるわけです。

※タイトルは"My kingdom for a horse!"を、自動翻訳にかけたもの (^^)

# by nazohiko | 2006-06-25 08:04
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by nazohiko | 2006-06-25 08:04 | ☆旧ブログより論考・批評等
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