巳年というのは、つまり蛇の年というわけだが、蛇は十二支の動物の中で、年賀状や縁起物のデザインが成功しにくいものの筆頭格だろう。大抵の場合、蛇から恐ろしげなイメージや不気味なイメージを除去しようとする一方で、手を替え品を替えして、可愛らしい造形を与えようとするのだが、どっち付かずの結果に終わってしまう。
今年の松の内に方々から頂戴した年賀状の中で、思わず「これは!」と膝を打ったのは、サン=テグジュペリの
『星の王子さま(Le Petit Prince)』に添えられている、象を飲み込んだ大蛇の断面図を真ん中に刷り込んで、背景は真っ白、文字も最小限あるのみ(新年を祝う四字熟語と、送り主のお名前とご住所)という1枚だ。蛇という奴からどうしても払拭できない、おどろおどろしいイメージを敢えて活かしつつ、気宇壮大なユーモアが新年の祝意にも通じるような、グッド・センスな版面に感服した。